宇宙防衛軍?

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070606i113.htm
安全保障問題はもっぱら憲法九条改正を中心議題に据えられることが多いが、あまり本題に上がらないようなこういう法律整備こそ、結構重要な部分を下敷きにしているのだろう。
引用はしないが、ウィキペディアで見ると、国防族議員が推しているとあるので、もちろん宇宙における安全保障が中心議題であるのだろう。すると、宇宙における安全保障とは、具体的に何を指しているのだろうか。現在の日本の宇宙産業の状況を見るに、ロケットすらまともに打ち上げることが困難であるのだが、一体どのような「防衛」が可能となると言うのか。
以前に中国が衛星破壊ミサイルを打ち上げたことは、宇宙開発に携わる世界各国に緊張と動揺を与えた。中国が自国衛星を破壊した影響だけでも、宇宙ステーションなどが危険に晒されることとなり大問題であったが、各国は中国が宇宙空間における「平和状態」を崩しかねないのではないかと懸念している。特にアメリカにとっては、自国の軍事力を情報衛星に依存している事情もあり、最も危機感を抱いていることだろう。宇宙空間における「平和」が乱されたことを、この法案成立の理由としたいのかもしれない。しかし、スターウォーズ計画のような本格的な宇宙戦争の危険は、現代世界においてはほぼ過去の問題であろう。それに、そもそも日本の宇宙技術のレベルで宇宙における防衛措置を講ずることなど可能なのだろうか。
私が気になる点は、宇宙での安全保障を論ずる場合、それが地上にどのように関連してくるのかと言うことだ。宇宙のことは宇宙で、と普通は思うかもしれないが、宇宙に対して衛星やロケット、あるいはミサイルなどを発射するのは、あくまでも地上の基地である。宇宙における「防衛」の意味を拡大解釈すれば、「宇宙空間において危険となりうる地上の構造物に対して(軍事的に?)介入できる」と言える。もし、宇宙基本法案の宇宙における安全保障の意味をそのように解釈するのならば、宇宙技術が未熟で、宇宙空間について積極的な介入の困難だと思われる日本にも、介入していく手立てができることになる。
ただ、これはあくまでも過度な拡大解釈をしたならば、という問題であって、実際にはそうではないだろう。そこで、次に問題だろうと思われるのは、同法案における安全保障観が、来るべき憲法九条改正における与党スタンスの、前もっての表明になるということであろう。引用先の記事を見ると、”攻撃的でない軍事利用は可能だとする「非侵略」”とある。これがどのようなことを意味しているのか。素人見解ではあるが、読み解いてみたい。
ここで可能とされるのは、少し読み替えると”非侵略的かつ非攻撃的な軍事利用”である。まず私は、そのようなことが可能なのかと疑問を感じる。ここでの「侵略」と「攻撃」とは、具体的にどういった行為を指すのか。自軍が敵領内に侵入して交戦するという事態をもって、侵略かつ攻撃と見なすのならば、宇宙ネットワークを利用した敵内部の情報の友軍に対するリークは許可されると言えるだろう。また、「軍事利用」という言葉の意味を掘り下げるならば、侵略攻撃を行う主体が自国でない限り、情報に限らず指揮命令系統などの役割を果たすことも可能になってくるのだろうか。
以上のように、我々の暮らす地上とは別世界であると思われているかもしれない宇宙空間についての同法案も、掘り下げれば地上の安全保障に関係する可能性を有しているわけである。