参院選雑感とか

今更書くのもどうだかなと思いつつ。
参院選の感想を概ね見ていると、自民敗北の最初の原因は復党問題であったとする見方が多いようだ。じっさい、あの問題から安倍政権に対する人々の期待が裏切られ始めたと見ておかしくない。
ただ、今回の自民大敗の最大の原因は何であったかと問われれば、それは選挙が近くなっても止むことのない失言だった。しかし、この失言問題というのはマスコミによる単純な揚げ足と煽りの連続なのであって、つまり内実はマスコミちゃんの大勝利というわけなのである。
選挙翌日のTVニュースでは、どれも失言問題を大敗の直接原因に挙げていた。そんなに自画自賛したいのかという愚劣なマスコミの姿を見ながら、衆愚政治とは何だろうかと思った。
私見になるが、衆愚政治というのは、政治家の煽動によって民衆の意見が操作される政治を指す。小泉時代の政治は衆愚だったのかと問われれば、グレーである。しかし、どちらかというと小泉前首相は民衆の意見に合う政策を提示したのであって、この点において彼の政治がポピュリズム大衆迎合型政治)と呼ばれる所以ではないかと思った。
現在の安倍政権は特別なカリスマ性がなく、メディアを引き寄せる力がないという点で、マスメディアが自律的に煽動活動を行うことになってしまった。衆愚政治は政治家が煽動することであるが、メディアが扇動している現在の状態というのはどう解釈すればいいのだろうか。
岸信介について調べれば調べるほど、安倍首相の政治思想の稚拙さが分かってくるが、それには関係なくメディアの煽動によって選挙結果が左右される自体というのはきわめて不毛ではないか。民主が勝つ選挙ではあったろうが、自民を大敗に追い込んだ最大の戦功はマスメディアに与えられて然るべきである。馬鹿馬鹿しい。
そもそもだが、私はいわゆる「政治とカネ」の問題は重視していない。いくら汚職して私腹を肥やそうとも、その分国家に貢献すればそれで良いと思っている。個人が着服できる金額なんていうのは、毎年決定される国家の予算規模に比べれば微々たるものに過ぎないのである。端的に言えば、例えばある政治家が10億円分を不正に儲けていたとしても、国家規模の政策を成し遂げることによって国民に10兆の利益を与えていたなら、その政治家は間違いなく素晴らしいであろう。
だがしかし、という反論があるかもしれない。そういう反論が普通だろうとは思う。しかし、政治家が不正に儲けることに対して憤る感情というのは、政治家が自分と同じ一個の人間であるという平等思想に端を発する嫉妬の感情でしかない。むしろ、政治家というのは民衆が操る道具に過ぎず、その政治家が民衆にとってどれだけの利益をもたらすかという冷徹な値踏みをすべきではないかと思う。どうせ人間は平等とか言いつつも、政治家が問題行動を起こすと公人だから慎めとか言うじゃないか。
ま、そういうことで言うと、今回の選挙は小泉時代のくびきから解き放たれたマスメディアが大活躍した選挙であったと言える。何かと選挙時に問題となる「アジェンダ設定能力」というのは、言い換えればいかにマスメディアを統御するかの技術であると言えるのだろう。現在の民主党がこの点で優れているかと言えば、そうでもなく、案外次の選挙ではマスメディアが自民党に勝たせる構図が出てくるのではなかろうか。