酒見賢一の新書は立ち読みしてでも嫁

中国歴史ファンならこれ必見。
冒頭の劉備が悪いという話でぐっと読者を惹きつけるのはさすが鬼才酒見とも言うべきもの。文の至る所に皮肉と遊び心たっぷりの洒落が入っている。だが、後段に行くにつれて毒味が和らいでいて後段の拳法話は、素人の私には、ほぅーという感じで読ませてもらった。にしても章構成は雑で、実は拳法話の後ろの二章分でページ数の半分くらいを使っている。それだけ素早く書き下ろしの作だということなので、立ち読みで好きなところを読むのがよろしい。ファンなら買え、ということで。
私がこれはと思ったのは、孫子に続けて李衛公問対の章がある点で、貞観政要李衛公問対を拾い読みしたことのある私にはもってこいのものだった。ただ、内容が内容だけに深入りできなかったのだろうが、割かれているページ数がやや少なめであったのが残念だ。
李衛公問対が挙げる奇正とは如何にという論議に対しては、私の中ではっきりとした答えが出ているが、ここでは措いておこう。この答えこそが、中国兵法書の最高峰である孫子の妙味であり、限界と言える。
そういえば友人がクラウゼヴィッツ戦争論」の読破を目指していたが、どうなったのだろう。孫子であれば、専門家ではないが、そこそこに理解はできているつもりであるので、東西の戦術戦略論に華を咲かせてみたいものである。