今時のPCスペック論

一年間いろいろ制限的生活をしていて思うのは、PCに疎くなったなというあたり。
初めの頃は週刊アスキーを時々立ち読みして知識を補っていたが、しばらくするうちに追いつけなくなってしまった。
が、今年の初めにPCパーツを一新したときに分かったのだが、どうやらこの一年でPCはハードスペック面で飽和状態を超えて、値崩れが一層進んでいるようだ。
例えば私が組み換えたパーツだが、


CPU:Pen4 northwoodコア 2.6GHz with HT ⇒ Pentium Dual-Core E2180 2.0GHz
マザー:GIGABITE GA-8IPE1000-G ⇒ ASRock 4Core1600Twins-P35
メモリ:SDRAM 256MB*2 ⇒ DDR2 1GB*2
ビデオカード:LEADTEK GeForce6800 ⇒ 玄人志向 GeForce8600GT
+電源交換


以上で購入金額自体は5万弱、旧品の買い取り額を差し引くと実に4万円を切るというお得な買い物であった。
パーツを交換したのは電源とビデオカードの消耗が激しかったからで、互換性の都合上他のパーツも換えざるを得なくなったわけだが、大半のパーツを組み換えてこの程度の金額ですむというのは驚きであった。
特にメモリ市場の暴落が大きく、それがビデオカードの価格下落にも影響を及ぼしているのだろう。
CPUに関しては複数コア化が進行しているが、クアッド(4コア)を導入したところで、アプリケーション側が対応しきれていないため、現状でのメリットは低いだろう。
結局のところ、この価格帯でそろえれば、残りのHDD、ケース、モニタを含めても10万円以内でスペック的に申し分ない構成が可能である。
国内のPCを販売している電機メーカー各社が軒並み撤退寸前などと言われ出してから久しい。
ただでさえ割高のメーカー製PCに相応の金を出す価値があるのは、技術的に洗練された一部のモバイルノートPCくらいなものだろう。
そのノートPCに関しても、スペック面だけを見れば10万円で満足のいくスペックが得られるし、中古でも5万円くらいで良品が出回っているのを見ると、10万円の構成が贅沢にさえ思える。
一昔前はPCと言えば、メーカー製で20万くらいがその時々のスペック的な平均値を行っていたが、今や一般的な用途に絞れば、”10万円天井時代”を迎えているのではないだろうか。
実際、PCショップのBTOモデルを見ると、10万以上のモデルになると、”ゲーマー向け”という文句が付いてくる。
それはとりもなおさず、10万円以上のPCはゲーマー以外には大概必要ではないということの証左となっている。
このようにPCの一般的相場が値崩れしているのにはいろいろな理由があるだろう。
一時は韓国サムスンが覇権を握ったかに見えた半導体業界は、高い技術力を必要とする方向にシフトし、米サンディスクや日本のエルピーダ東芝陣営に追い風がきていると見る向きが多い。
台湾も同じく煽りを食らっているように思えるが、着実に技術力を蓄えているので、そうでもないらしい。
そして何よりも大きな要因は、スペック伸長を活かすコンテンツが不足していることだろう。
今まではスペックの伸長がコンテンツの進化と比例していたために需給が一定していたが、コンテンツ不在の現状では何を目的にスペック伸長がなされていいか分からない。
だからこそ高スペックマシンが”ゲーマー向け=娯楽用”というレッテル扱いになっていると分かる。
本来ならば、コンテンツがビジョンを示す形でスペックの伸長に方向性を持たせるのが理想かもしれないが、いわゆる”あちら側”ビジネスなどの普及によって、十分なコンテンツを利用するのに”こちら側”のPCのスペックを必ずしも必要としないようになった。
こうした現状で再び”こちら側”への揺り戻しを促すようなコンテンツ作成が好ましいとも言い切れない。
チープ革命が”あちら側”ビジネスを促したことで、チープ状態が固定されるという事態が発生してしまっているのである。
そこで改めて、これからのPCのコンテンツとスペックの伸長進化の方向付けを考えるならば、娯楽化する方向にしかないように思える。
必ずしも万人に必要なわけではないコンテンツに必要なスペックやパーツを、特定の客層が買っていくという事態である。
当然だが、販売店側に必要とされるのは、多様な要求に応える品揃えである。
そこで多様な品揃えに役立つのがネット販売などの”あちら側”技術の利用だと思うと、実に奇妙な感覚を覚えるものである。